福岡県内の「平成に誕生した国道」を振り返る(2)
国道501号(国道389号)

作成 2018年7月11日

 【基本情報】

 福岡県大牟田市から有明海沿いを延々と走り、熊本市郊外の宇土までを結ぶ国道である。

国道昇格後の扱い

「上位国道」に隠れた国道、その上位国道も政治的。

 福岡県区間で「国道501号」と書かれた国道標識を確認することは困難に近い。というか、大牟田市民ですら「え?そげんかとあったか?」とポカーンとなる可能性が大きい。この国道は上位路線の国道389号と重複しており、単独で運用されている場所は一切存在しない「389とセットで501も運用されてます」という解釈が正しいため、福岡県としては「501?そげな標識、いちいち設置せんで良かって、めんどくさか()」(お役所発言)といって無視されている。

 1993年の国道誕生前までは、福岡県道7号大牟田熊本宇土線という主要地方道(県道)であり、それをそのまま国道に昇格させた路線。そうなると、本来であれば「国道501号」と案内するのが筋となるのだが、どうして国道389号と案内されているのか。実は国道389号は昭和50(1975)年に誕生した国道であり、当初は鹿児島県阿久根市を起点とし、海上区間を2度挟んで長崎県長崎市に至るコースを辿っていた。現在とは起点が逆だったのである。

 その後、雲仙普賢岳そばを通る県道も国道に指定するべきという風潮が高まり、既に国道に指定されていた熊本県苓北町~牛深市(現・天草市牛深地区)~鹿児島県とは別に、有明フェリーを運航する長洲町~国見町(現・雲仙市国見地区)と、雲仙岳の山頂そばを経由する国見町~口之津町(現・南島原市口之津地区)を追加。その際、起点が重要な場所とは言いがたいため、福岡県大牟田市・熊本県荒尾市まで無理やり拡大解釈させて、今のような複雑な国道が誕生してしまった。

大牟田市内の国道501号は、割とあっさり。


起点の有明町交差点(R208)。国道501(389)号に進路変更して、いきなり踏切。
JR・西鉄大牟田駅がスグ近くにあるため、開かずの扉状態になっている。


目の前にJR・西鉄大牟田駅が。にしてつめ~(←カモノハシだってJRだろうがw)


踏切から200m程進んで、大正町3丁目交差点を左折。

 福岡県区間の距離はわずか3km程度しかない。起点の有明町交差点から国道501号に入ると、いきなり鹿児島本線・西鉄天神大牟田線の踏切。すぐ近くにJR・西鉄大牟田駅があり、西鉄電車・JR線どちらも共用しているため、なかなか踏切が開かない。のっけからコレである。


いわゆる「十三間道路」と呼ばれるこの区間は、4車線道路で快速。


シールで上書きする形で「501」の案内を確認できる。


県境の四ツ山地区で福岡県区間は終わり。
周囲は熊本県・福岡県の違いが殆ど分からないため、県境マニアからは、割と高い評判を受けている。

 大正町3丁目交差点で左折後、県境まで4車線道路が続く。工業都市・大牟田らしい快速道路が続き、大正町エリアでは大蛇山の舞台にもなる。延々と南に進み、県境にあたる三川町末端の四ツ山地区で熊本県の県境標識がある四ツ山交差点(県道126号)で、福岡県区間は終わり。大牟田駅そばの「開かずの踏切」さえクリア出来れば、後は意外とあっさりである。


熊本県側から四ツ山交差点を眺める。
福岡県に入って、すぐ隣の狭い道路が、昔の国道501・389号。

 四ツ山交差点を熊本県側から眺めていると、現在は4車線の「十三間道路」とは別に、三川町地区の市街地を通る狭い片側1車線の道路が枝分かれしているのが分かる。以前は、そちらが主要地方道7号に指定されており、国道にアップグレードした時、その狭い道路がそのまま国道に、隣の十三間道路は県道126号という逆転現象が起きていた。2009年に福岡県の裁量でバイパス側を国道・旧道を県道に鞍替え。翌年に、旧道部分の県道指定を解除し、4車線のバイパス道路を県道と重複させる形で、旧道は大牟田市道に降格している。

参考文献:
福岡県公報(福岡県告示第631号) 平成21(2009)年4月1日
福岡県公報(福岡県告示第616号) 平成22(2010)年4月1日

 ここでも登場した「鞍替え工作」。前回紹介した国道495号も、元を辿れば国道3号の払い下げ物件と、主要地方道の組み合わせで継ぎ接ぎさせたものだが、国道501・389号に関しても、県境までのアプローチ区間で大牟田市と福岡県が妥協し合う形で路線の鞍替えを実施している。また、国道501号の実体区間が見えるのは、熊本県に入ってしばらく進んだ長州港フェリーそばからとなっており、それまでは国道501号標識を眺める機会は殆ど無い(福岡県側は皆無、熊本県側で数枚あるのみ)


熊本県側では 四ツ山交差点の先に「501」の標識がある。


福岡県側の県境付近に「389」はあっても「501」は無い。

「重複国道」は殆どメリットなしである理由

 いわゆる、重複国道(別の国道と重なって路線認定されている国道)の場合、その下位路線まで掲示するかどうかは、あくまでも道路管理者の裁量に委ねている。福岡県は「しゃーしか」だが、熊本県に入ると丁寧に二重路線案内をしているため、この違いって何なんやろうなぁ~と思う。

 重複国道に対するメリットは、実を言えばそれほどない。国から貰える国道整備・維持に掛かる補助金も「上位国道1本だけでコレだけ」。となると、都府県は「出来るだけ路線と被らせて、維持費・建設費を抑えよう」と考えるようになり、重複区間を増やそうとする(その悪足掻きに近いのが、宮崎県の某・国道)。重複だらけになってしまうと、「別に国道はそんなところから始まらなくても良いんじゃ無いのか?」と考えるはずだが、お役人や国道を誘致させようとする国会議員のセンセイ方の発想では「自分とこのムラば通って、重要な起点・終点・経由地は人口○万人以上」みたいな考えであるため、妙ちくりんな国道が誕生してしまう。

 美談で言うならば「合理化」、悪い言い方をすれば「政治的」。501の場合は501が悪いんじゃなく、その上位路線である国道389号を、どうして大牟田に引っ張る必要があったのか?ということ。平成になって誕生した国道というのは、そういう継ぎ接ぎも良しとする解釈の下で誕生したワケあり品のオンパレードなのかもしれない。 

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