無かったことにされている?
福岡県道114号前津江星野線
加筆修正 2018年8月24日
作成 2018年6月5日
大分県日田市の旧・前津江村と、福岡県八女市の旧・星野村を結ぶことに「なっている」県道。両県ともに路線認定は行われているものの、県道として運用されているのは大分県側のみで、福岡県側は県道区域が存在しないため、大分県側の一方的な認定のみに留まっている。
八女県土整備事務所が公開している管理図より。大分県側に伸びる114号が、県境を境にしてプッツリと消滅。
Googleストリートビューより、県境から大分県側を眺める。空き地の近くに県道標識がある。
こちらは福岡県側。旧・星野村のモニュメントはあるが、その先の道路には県道標識が無く、林道と同格。
前津江星野線の謎を解き明かす
前津江星野線は、前身として昭和53(1978)年に、当時の前津江村と星野村がそれぞれ独自に村道として整備した「柳・小畑線」という道路が発端となっている。大分県側は、柳・小畑線と直通していた大分県道673号小畑日田線とセットで整備する必要があったものの、当時の大分県に財政的余裕が無かったことから、奥地産業開発道路(1964年施行・2003年廃止)の特例を利用して小畑日田線と柳・小畑線をダブルで整備することになった。
対する福岡県側も星野村の財力だけでは限界があったため、福岡県が代行する形で村道を整備。具体的には国県補助事業・過疎対策事業・山村振興事業などの法律を利用して税金を集め、それを利用して柳・小畑線をはじめとする村道・一部の林道を整備して今に至る。
言い換えれば、なぜ大分県側は県道に指定する必要があったのか、ということにもなる。大分県立図書館に残された資料を探しても、明確な理由は見つからない。但し、幾つか県道昇格をうかがわせるヒントは存在しており、大分県側は県道・小畑日田線の整備を奥地産業開発道路の特例に基づいて整備したいという目論見があった。
現に、旧・前津江村役場を含めた周辺道路の整備に当たっては、当時の村史からも特例を利用してでも社会基盤整備が必要だったという記述がある。この流れで考えれば、小畑日田線で接続していた当時の柳・小畑線に関しても、特例を活用してまともな走行が可能な道路を整備し、やがてはそのまま県道に昇格させることで、反対側の福岡県側との交流活発化・逃げ道確保が出来るのでは無いかという公算があったのではないかと推測できる。
一方、福岡県側は単に星野村の社会基盤整備代行のみを考えていたため、大分県のように隣県まで県道を認定する必要などないと判断。大分県と福岡県の行き来が可能な県道として、大分県側が一方的に「前津江星野線」を認定したものの、福岡県は告示で発表があったという程度に留め、無関心を貫いている。
大分県側の一方的な片思いが続くが、認定から20年以上経過した今でも福岡県側は無関心であるため、もはや前津江星野線という県道は単なる大分県側の道路整備の熱意だけで動いたと認めざるを得ないのかもしれない。
奥産道のことが出たため、その話も。この特例法は、その名の通りに手が届かない地域に、経済発展上、必要とされる道路を、当時の建設省(現在の国土交通省)レベルで特例で整備するという法律。道路整備に必要なお金が無い地方にしてみれば死活問題で、この特例法に基づいて林業を行いたいと考えていた当時の自治体としては、事実上の補助金制度であることから、この制度を利用して市町村道や都道府県道をあちこちに整備した実績があるとされる。
奥地等産業開発道路は、「奥地等産業開発道路整備臨時措置法」(1964年6月24日公布)と呼ばれる法律に沿って整備されたもの。流れとしては、
ということになっている。
では、どのような路線が整備の対象になるのかというと、
……などとなっている。実際のところは正しく整備されて住民の便宜を図っている路線もある一方、最後まで建設されずに未成線となり、単に税金の無駄としてドブ捨てされてしまった路線まで、実に玉石混淆といえる。
【参考文献】
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