八木山バイパスの有料化を考える

作成 2017年11月7日
加筆 2024年10月2日

再有料化の考え方

 1985年2月26日に暫定2車線で開通し、2014年9月30日までは日本道路公団・NEXCO西日本が管理する有料道路だった。しかし、正式な無料開放後に事故が多発する事態が発生。拡幅の必要性が高まったものの、国税・県税だけでは限界があることから、県・国土交通省との協議の結果、拡幅に必要な資金を調達することを理由に有料化する方針。

【有料後の通行料金・通行料金の考え方】

 これらを勘案した上で、1985年~2014年まで実施してきた有料道路当時の価格帯の半額程度とし、1回につき250円+税(普通車)を基準に考える。再有料化の時期は2025年度~2050年度を予定している。

※5車両区分体制を導入する場合の価格。普通車以外は、一般的な有料道路における倍率を設定した際の予想となっています。

【2014年の無料化前までの価格設定】

無料化したら事故が増えちゃった。だから「有料化」?


知る人ぞ知る、城戸緊急出入口。有料化すれば、再びココも入退場制限が掛かるのかねぇ。  

  八木山バイパスが2014年に無料化され、NEXCO西日本の有料道路から、本来の国道の管理者である国土交通省にバトンタッチしたことで、八木山峠を経由する旧道の交通量は相対的に減少。有料道路があったお陰で八木山バイパスを敬遠するドライバーも多く、それが原因で旧道沿いのドライブインが繁盛していたことから、無料化によって客足が減ってしまうという懸念は今でも残っている。

 ところが、無料化によって思わぬ問題点も浮上。最大の理由は「事故が起こったら逃げ道がない」ということである。有料道路時代は、あくまでも建設費の回収を理由に有料道路を運営していたが、完成した1985年当時と比べて交通量が飛躍的に増大した今では、昭和末期時代の道路線形があまりに窮屈すぎることや、こうみえて暫定2車線という圧迫感だけが残る状況下で無料化されてしまったため、結果的に事故による経済損失が拡大。

 この問題を取り上げた地元紙・西日本新聞の記事に限らず、筑豊エリアの飯塚・田川・嘉麻などでも、八木山バイパスの利用は敬遠する傾向が目立ち、事故で渋滞すると逃げ場がないため、仕方なく旧道を使って迂回せざるを得なくなる。で、その旧道も交通に支障を来すことから、そこで渋滞や事故が起こったら……お察し下さい

 八木山バイパスを今後どうしたいか、X(旧・Twitter)のアンケート機能を使ってゆる~く募集をかけたところ、

 が圧倒的に多く、特に4車線化による逼迫した状況を解消させて欲しいという筑豊の人たちの声は計り知れない。


私が独自にアンケートをとった結果(2017年11月7日。アンケートURLはこちらです


4車線化が最多、次が有料道路に戻して受益者負担原則を維持、という声。

 八木山バイパスと接続する飯塚庄内田川バイパスは、トンネル工事や車線拡幅などのプロセスを経て、だいぶ流れが良くなっており、残る峠のトンネル部分が4車線化されれば、大幅にクルマの流れは良くなる。また、八木山バイパスの末端である穂波東インターと接続する国道200号も、日中は渋滞ばかりしてはいるが、それでも4車線の状態で無難に走行できるメリットを考えると、有料道路の借金返済と維持だけに固執してきた八木山バイパスは、明らかに時代にマッチせずに縦割り行政だけが残る形になったと言わざるを得ない。そもそも国道201号は、福岡市と筑豊の主要都市をダイレクトに結ぶ道路であるため、国や福岡県も無視できない存在であったはずである。

 時代に適合するようにアップグレードをするのであれば、

 といったことが必要になるのではないか。

八木山バイパスは「拡幅」をチラつかせる構造になっている

 八木山バイパスは2014年に無料化された今ですら、4車線拡幅をする気配は一切無い。ただ、4車線化するに必要な用地や拡張は確保されている。


まっ!あんなところを通っているなんて。左側の「はみ出し」が拡幅スペースか。


筑穂インターまで1.5kmの標識があるところも、増設用の空き地は確保されている。

 2018年3月に八木山バイパスを利用。無料化されたせいで、旅行速度が恐ろしい程に遅く、トンネル内では時速40~30キロまで低下することもあった。飯塚市側は拡幅の早期実現を要求しているが、私は今さら感があるにしても、最初から暫定ではなく完成4車線で運用して欲しかった。

 並行するJR篠栗線の「単線」と同格で扱われても困る。で、篠栗線も複線化してくれないだろうか……と思うが、こちらは台所事情が厳しすぎるJR九州としては、多分、飲まない。福岡市の「郊外」は、ホントに便利なところと不便なところの差が激しすぎる


せっかく電化されていても、信号待ちで数分程度の停車が必要になるなど、篠栗線の複線化も懸念材料。

「有料化」は正しいのか?


再有料化もまた、民主主義ではないだろうか。

 一度無料化した道路を再び有料化するというのは「前例が無い」。しかし、前例が無いからと言って、別に躊躇う必要も無い。なぜならば、時代の変化に伴って、無料を前提とした有料道路制度の解釈が、現代社会で通じる路線と通じない路線があることから、無料化ありきの手段とは距離を置く姿勢があっても良い。

 例えば、旧・民主党政権や一部の経済評論家が唱えた高速道路無料化も、無料化に伴って経済波及効果が見込まれると推測されていたものの、蓋を開ければ渋滞だらけで地方に波及したかどうかは疑問。たたき台こそあるものの、結局はロクに検証することもなく血税が流し込まれ、無責任というレッテルを貼られてしまった。一方で、ETC限定の休日上限割引も、元を辿れば高速道路の無料化を打ち出した政党に対抗することや、当時はETCの活用手段が極めて限定的だったことから、不景気に便乗する形で登場したもの。同じ狢とはこのことである

 兼ねてから私は何度も申しているように、現在無料化されている高速道路は、原則としてNEXCO各社が管理する有料道路制度に戻すことが大事である。その際、通行料金だけでは維持が困難と判断される路線のみ無料化を続けるものの、いわゆる「高速道路」と思わしき快速路としては不適切な路線(例:並行する一般道路がそもそも快適に走行が可能で、渋滞とは無縁な場所にムリして高速道路を建設)である場合には一般道路に降格するか、ETCマイレージで後日全額分を還元することで「実質無料」という措置などを講じると良い。

 日本独自の考えとして、鉄道・バス輸送といった公共機関を活用した自動車交通偏重からの脱却(敵対では無く、上手に融合することで、都心・地方での効率的な輸送を行うこと)が出来ていない。常に「鉄道がー」「バスがー」「道路がー」という特定インフラ信仰主義の方が先で、整備したら整備したで国土交通省と警察で縦割り行政が発生する始末。これでは1万年経っても、今のような縦割り感だけが残るガラパゴス社会が続いていくんだろうけど、それが日本人の美徳と考えてしまう社会である以上、考えたって無駄である。

 私も八木山バイパスを使って筑豊へ出かける機会があるため、この場を借りて八木山バイパスの早期車線拡幅要望を出し続けて行きたいと思う。

参考文献

八木山バイパス

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