箱崎宮前駅の近くにある車両進入規制の謎

作成 2018年8月6日

かつての路面電車の「生き証人」

にしてつ福岡市内線の記憶・馬出~箱崎電停(西日本鉄道株式会社)


バス専用道入口(福岡市東区・筥崎宮そば)

 筥崎宮の近くに行くと、バスしか通行できない謎の道路が存在する。以前はこの地に路面電車(西鉄福岡市内線)が通過しており、そのうちの一部である「貫線」が走っていた。1910(明治43)年に箱崎電停~大学病院前電停が開業した際に誕生したものだが、戦後のモータリゼーションに伴って1975(昭和50)年に廃止。その跡地を西鉄バスが行き来するようになり、その時の路面電車専用通路をそのままバス専用道に転換し、現在に至る。

 以前は西日本鉄道の保有物となっていたが、現在は福岡市道になって公道化している。但し、道路区域は現在でもバス専用道(特定車両のみの通行しか出来ない、車両通行規制)のままになっており、要がないのにバス専用道に一般車が通行すると道路交通法で罰せられる。


地下鉄箱崎宮前駅の隣にある「バス専用道」の入場門。
標識が設置されている支柱は、かつての路面電車のレール跡を使っているのは、結構有名。


廃止された路面電車に並行する形で、福岡市地下鉄貝塚線が走る。


バス専用道の反対側を眺める。筥崎宮のほか、目の前に箱崎小学校・福岡県立図書館が見える。
バス専用道経由の西鉄バスが北上する場合、箱崎小前交差点で国道3号方面へ左折する。

箱崎バス停(旧・箱崎電停)

 バス専用道の脇道から徒歩で歩くと、すぐに箱崎バス停と合流するが、以前はここに箱崎電停が設置されていた。現在は単なる地下鉄駅と筥崎宮の入口でしかないが、こんなところに電停があったなんて、今どきの若者どころか、40~50代の人であっても知らない世代が圧倒的に多いだろう。もちろん、私も知らない。


箱崎バス停。旧・箱崎電停跡地に作られている。


箱崎バス停(旧・電停)から筥崎宮そばを眺める。今の世代には路面が走っていたことなど、分かるはずが無い。


電停跡地のバス路線は、基本的に1時間に10本前後と、割と充実している。
但し、路線番号系統しだいでは、1時間に1本程度に絞られることもあり、油断できない。


バス専用道に並行して地下鉄が走っており、一部では地下鉄整備の際に誕生した一般道と合流している。
僅かに民家が残る以外、ビル・マンションだらけで、西鉄が公開している当時の木造住宅は殆ど見受けられない。


バス専用道の幅員は、当時の路面電車の幅とほぼ同じ。
西鉄バス同士が離合できるため、昔からココは複線だったことがわかる。

馬出通りバス停(旧・馬出電停)

 バス専用道と言えども、距離としては僅か1km足らずしかない。筥崎宮参道からバス専用道がスタートし、箱崎バス停からバスに揺られて乗っていくと、市道との交差点→馬出通りバス停→その先でバス専用道が終了。


バス専用道なので徒歩で歩けない。そのため、ココは路面電車と同様、西鉄バスで。


フェレット「どうだい?路面電車→BRTもどきの道をバスで移動するの」
SUGOCAカエル「……なんか、BRTいうわりには、フツーやな」


福中銀そばの馬出通りバス停で下車。運賃は190円。
天神⇔博多と違い、それ以外の福岡市内は初乗り運賃が割高である。


馬出通りバス停から箱崎方面を眺める。
不自然に住宅街や側道部分があるのも、以前はここに路面があったことの証拠と言える。


馬出通りバス停と箱崎バス停との間は、距離的にみて1km弱か。


馬出通りバス停の先で繋がるT字路交差点でバス専用道は終わり。
この先は福岡県庁・福岡県警本部を経由し、福岡天神を目指す。

 馬出通りバス停の箱崎方面側は、以前の電停跡地をそのまま残しており、歩行者用の通路や脇道が別に設けられているところも、かつては路面が走っていた「生き証人」。私のような1980年世代にしてみたら「何のこっちゃ?」と思うのだが、少なくとも今の年寄りにしたら、「昔はココに路面が走りよったとばい」という事になるのだろう。


馬出通りバス停そばの極狭路にある歩行者専用道標識も、かつての路面の名残。


馬出通りバス停には、当時の電停のりばの石畳がそのまま残されている。

福岡市内BRTの先駆けか?

 距離としてはごく僅かだが、最近話題のBRT(バス・ラピッド・トランジット)を少しだけ先取りすら感じられる。現在、一旦は廃止したはずの路面電車を、BRTの形態で復活させるという構想が、西鉄と福岡市の共同作戦で検討しているという。仮にBRTの形態で復活すれば、天神・博多のまちなかに、先ほどのようなバス専用道が至る所に出てくるのかもしれない。西鉄バスがくまなく一般道を占有しすぎているため、緩和させて車両の行き来を回避するための対策を民間主導で考えているのであれば、少し期待しても良いのかな。

参考文献:西鉄&西鉄バス 沿線の不思議と謎(宮崎克則・監修/実業之日本社)

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